AI活用の問題点

 人工知能(AI)を活用することで汎用性が向上できると良く言われます。これは、ある意味で正しく実際に様々な対象や製品やシステムにAIは適用可能で、そして、何に適用しても多くの場合でうまくいくことが多いのです。これは、ちょうどマイコン(CPU)が登場した1980年代の時代のようです。今ではほとんどの製品にCPUが組みこまれ活用されております。AIも今後益々様々な場面や多くの製品に組み込まれ活用されていくことになるのは確実です。

 しかし、現状のAIでは実際にAIを活用しようとすると様々な問題に直面することが多いのです。例えば、

1.いくらAIのアルゴリズムを工夫したり複雑な処理をやらせても判断精度が十分な精度にはならない。

 システムにAIを組み込んで何らかの判断をなさせる場合には、人工知能はそれ単独では動作できず、上記のような5段階の工程を経て動作します。人工知能の部分はその最終段階となります。そして、それらの工程は上流(前工程)へ行けば行くほどより重要なものとなります。悪いデータを入れて人工知能に判断させると人工知能の部分でどんなに頑張っても良い結果とはなりません。したがって、実際のシステムで特に重要なのは、どのデータを使って判断させるのかの「評価パラメータの選択」の部分とセンサで計測を行う「センシング」の段階の最初の二工程です。良い計測を行って正しいデータを取得できるようにして工場データの「見える化」が実現できていれば、人工知能の部分のアルゴリズムが簡単な単純なものでもうまくいくことが多いのです。

2.ある製品のある条件で正しく動くAIシステムが実現できても製品や条件が変わると精度が極端に落ちてしまう。

 AIは汎用性が高く様々な条件や製品に適用可能なのは事実です。しかし、その判別精度は前述の五つの工程の各段階それぞれを最適化すると同時に、人工知能におけるディープラーニングの構造や計算方法・アルゴリズム等を最適化してはじめて実現します。特に人工知能の精度を表すF値を上げようと最適化を頑張り過ぎると、少しでも条件や対象が変化するとF値が大きく落ちるロバスト性の低いAIシステムになってしまいがちです。また、AIの部分についてはいくつかの自動最適化のアルゴリズムが存在するのでそれらを使えばいいのですが、人工知能の前処理の部分の特にセンシングの段階の最適化を自動化する手法はほとんど存在しません。それは、計測対象によって最適な計測条件や、そもそも計測のやり方が大きく変化してしまうので、それらを自動化するのがはじめから困難だからです。

3.市販の画像処理装置やAIによる判定システムを導入しても自社の技術の蓄積にならないので、他の製品への適用が難しい。

 現在では画像処理やAIを応用した自動判別システムが多数市販されておりそれらを導入してすぐに使用することができます。しかし、それらは通常ブラックボックス化されており、ユーザーサイドで調整や修正することが難しい場合が多いのです。しかし、前述の様に画像処理やAIでは測定対象や測定条件に応じた最適化やチューニングがどうしても必要になります。それらはメーカーにお願いすればやって貰えますが、ユーザーで行おうとするとそれなりの技術が必要です。画像処理システムやAIを応用したシステムを自社開発していけば、自社の製品や工場に完全に合致したシステムができると共に余計な部分がありませんのでシステムを安価に実現できます。その上、その過程で社内に技術を蓄積していくことができます。

 「AI技研」は計測と計測データ処理及び人工知能に長年の実際的経験を有しておりますので、それらを最適化したり少しでも改善させたりすることに多くの技術があり、ユーザーや状況に応じたチューニングを行うことも可能です。また、計測法やセンサの選択・AI技術の応用やシステム開発のお手伝いをさせて頂くことも可能です。